Signals from Heaven | Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ BWV177

Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ BWV177

2011.07.17 | baroque |

De profundis
Il Gardellino
(passacaille: 969)

30年代のカンタータが放つ独特の光彩、みたいなものを妄想する。もはや20年代ではない。メカニカルでテクニカルで重厚な器楽と器楽のような歌が軽やかに疾走する。黒く底光りするバロックが止まらない。

三位一体節後第4主日。この主日のためのカンタータの中では第177番「私はあなたに呼びかけます、主イエス・キリストよ」が32年初演だ。迷わず行こう。かなり後期の作品だからBCJのリリースはまだだけど、コープマンがあるし、クイケンとか選択肢は意外に多い。

つい最近届いたイル・ガルデリーノの新譜にもこのカンタータが入っていた。2010年録音。30年代のカンタータの10年代録音なんてまるで別世界だ。もはやゼロ年代ではない。

妄想だったはずの「メカニカルでテクニカルで重厚な器楽」が本当にウチの華奢な丹野井から流れ始めた。でも「器楽のような歌」ではない。彼らのシリーズは歌い手がパート1人。薄いけど器楽に組み込まれることなく歌に存在感があるのは歌い手の個性か。

冒頭の合唱と3人のソリストが歌いまわすアリア、そしてコラール合唱で締める全5曲は、ありそうでなさそうな構成。前作から気になっていたソプラノのヴェイナンツが今回もいい感じ。