Thomas Tallis: The Lamentations of Jeremiah
The Hilliard Ensemble
(ECM New Series 1341)
ポール・ヒリアーの脱退はヒリヤード・アンサンブルの大きな転換点だけど、ECMへの録音はそれ以上に大きな転換点となった。
ECMサウンドがもつ空間の広がりと無音の美しさが彼らによい影響を与えているかどうかは疑問。彼らの演奏は積極性を欠くようになり、平板で、各パートのフレーズではなく、縦の響きと残響ばかりが強く残る。確かに、アンサンブルのまとまりという点では彼らのCDの中でも屈指だし、ローカルな発音の問題を考えるきっかけを与えてくれたブリティッシュ・ラテンも十分に効果を発揮している。クールで淡々とした印象さえ受ける演奏だけど、曲調にはよく合っている。
しかし、EMI時代にあったはずの何かは失われてしまった。静かに美しく響くだけで十分素晴らしいけれど、彼らに求めているのは、ただ美しく響くだけの演奏ではない。
Lamentations of Jeremiah
Salvator mundi
O sacrum convivium
Mass for Four Voices
Absterge Domine
The Hilliard Ensemble:
David James (C-T)
John Potter, Rogers Covey-Crump (T)
Paul Hillier, Michael George (Br)